先週の土曜の話ですが、
東京大学のキャンパスツアーに参加してきました。
東京大学は、去年から、学生ガイドによるキャンパスツアーをスタートさせました。
現在、夏休みや春休みを除いて、毎週火曜午前、土曜午前・午後の週3回行われていて、無料で参加できます。
……んー、どこかできいたことがあるような。
私が学生時代にガイドをしていた、
早稲田大学のキャンパスツアーにそっくりじゃないですか。
早稲田は、西早稲田キャンパスなら毎週金曜午前・土曜午後の週2回、参加費無料で開催しています。
こちらの歴史は古くて、1989年(平成元年)から続いています。
そんななか、6月15日付の日経流通新聞(日経MJ)に「ブランド磨け 大学柔らか頭」という、ブランド価値向上に取り組む大学を紹介する記事が目にとまりました。
「大学全入時代」と言われ、大学が自ら積極的にPRに取り組み始めた、という内容で、ほぼ1ページが割かれています。
そこで、なんと去年始まったばかりの東京大学のキャンパスツアーが写真つきで紹介されていたのに対し、我らが早稲田大学は「大学ブランドの活用策」という一覧表の中で「
ワセダベアーグッズの販売」と記されているだけじゃないですか。
なんですかこのザマは、早稲田大学の広報課は何やってんだ……というのはさておいて、東京大学のツアーはそんなにすごいのか、参加してみることにしました。
というわけで、やる気マンマンで乗り込むつもりが、前日の金曜夜、職場の先輩に散々飲まされて二日酔いを押しての参加となりました。
……高崎線の電車がトイレつきで本当に助かりました。(こら)
さて、集合場所は赤門。
集合時間の9:50になると、「東京大学キャンパスツアー」の腕章をつけた人が5人やってきて、11人のお客を2班に分けます。5人・6人に分かれたそれぞれにガイドが2人ずつ、残りの1人は事務局か何かの方のようです。
早稲田はガイド1人で20人くらいまで対応しちゃうんですけどねぇ。
やっぱり私大と国立の違いなんでしょうか、なんて思います。
さっそく、赤門の説明からツアー開始です。
2人のガイドはともに3年生で、今春からガイドになったばかり。本郷キャンパスは3年生以上と大学院生しかいませんから、3年生でデビューするわけですね。
ここで2時間の足取りをたどると際限がありませんので、元早大ガイドの目で特に印象に残ったところを。
1.東大にも「無門の門」があった
早大生に「無門の門」という言葉は知られていなくても、正門に何もないことは、関係者なら「あーそう言われてみれば」と思っていただけるのではないかと。
早稲田のあれは「来るもの拒まず」という姿勢を表しているのです。世間に広く門戸を開くとかそういう以前に、そもそも正門に門がないのです。(シャッターがあるじゃんか、とか、だったら入学試験するなよ、というのはさておき)
東大の「無門の門」は東大病院に通じる龍岡門で、救急車が通るのに支障をきたすことから門扉が撤去されてしまった、という、別に理念か何かを表しているのではなく、単に実用面からのお話ですけれども。
私がガイドだった頃は東大の赤門を比較に挙げて、「門がないのは早稲田ならでは」などと説明していたので、東大ガイドから「ごらんのとおり、門柱があるだけで門がありません」なんて、全く同じセリフが飛び出したときは衝撃を受けました。
2.東大も施設の寄付を受け付けている
東大の学内施設なんてのは全部税金でできているのかと思いきや、とんでもない話なんですね。
象徴的なのは、安田講堂が戦前の安田財閥の創業者、
安田善次郎の寄付で建てられていること。
安田講堂の「安田」って、明治安田生命の「安田」だったんですか。
……てっきり、先生か何かの名前だと思ってました。
それから、総合図書館はロックフェラー財団の寄付なんだと聴いて、あー帝国大学はやっぱり違うなぁ、なんて思ったり。
早稲田にも寄付で建った建物はいくつかあります。が、堤康次郎の寄付だった第二学生会館はもうありませんし、図書館の建物が一部で「井深ホール」と呼ばれているもののソニー創業者の井深大が寄付したのは国際会議場の部分だけですし、14号館の清水正博に至っては、、、誰? という反応を示す方が大半ですね。
井深大も、名前から誰だか分かる方ってのは特に若い方にはあまりいらっしゃらないようで。ソニーが「盛田井深電機」という社名だったら一発なんですけど。
3.東大は構内に24時間営業のローソンがある
しかも、安田講堂の隣に。
東大は構内が24時間開いているので、24時間営業のコンビニエンスストアが成り立つんですね。
……早稲田も学生会館にセブンイレブンができましたけど、8時〜22時と、店の名前よりも短い営業時間です。
4.東大には国宝が1点しかない。
早稲田は2点持ってます。
5.国土の1000分の1は東大の敷地。
キャンパスも広いですが、全国に理学部の演習林がありますので。
6.東大にも、学生が入れない迎賓館的建物がある
「懐徳館」といって、総長と著名人との対談取材などが行われます。
早稲田にも
完之荘という、やはりツアーと言えども入ってはいけない場所が大隈庭園内にあります。
「完之荘」が飛騨の古民家を移築したこじんまりとしたものなのに対し、「懐徳館」は旧前田家の邸宅でそれだけで大隈庭園並みの広さの屋敷です。
大隈庭園も大隈宅跡で、戦災で一度焼けてしまったのも同じですが、大隈庭園は今や敷地の一部がホテルになっちゃったり学生がゴロゴロ昼寝していたり、全然違いますね。
おまけに、完之荘はリーガロイヤルホテル東京の日本料理店「なにわ」を通じると、実は誰でも使えちゃったりします。
とまぁ、二日酔いで今にも吐きそうな体調だったのに、充実した2時間でした。
早稲田はガイドを主に1〜2年生から募集して2〜3ヶ月ほどかけて研修をして(私は3年生になって応募してしかも研修に半年近くかかりましたが)4年間ガイドをさせるのに対し、本郷キャンパスには3年生以上しかいないので研修は1日で終了して即実戦デビュー、という違いがあります。
なので、実際の説明は原稿丸読みだったり、ガイドが安田講堂を見る位置に立って(=お客は安田講堂を背にしてガイドを見る羽目になる)説明したり、んーちょっとなーと思えるところはありました。
とはいえ、学内の見どころをまわる研修は随時行っているというお話でしたし、ツアーではガイドが1組に必ず2人つくほか1組あたり定員15人と少人数なので、それでよいのかもしれません。
早稲田は、デビュー前の研修をしっかりやる代わり、ガイド1人で20人まで対応しますので。
早稲田が出発前の20分間、
当局作成のプロパガンダビデオを見せているのに対し、東大はツアー途中で20分間の休憩があってガイドとの質疑応答の時間に充てています。
今回参加したツアーでは、私以外の4人が高校3年生だったこともあって、学生生活の話題が中心でした。やはり、東大ならではの「進振り」システムの話題が印象的でしたね。
担当ガイドの1人は、なんと文IIIから工学部へ進んだという話で、入学時に学部はおろか学科まで決まっている(せいぜい文学部に専修振り分けがある程度)早稲田にはない話題です。
後期教養課程も徐々に人気が出ているそうで、早稲田の教育学部で「学際コース」の人気が高いのとやはり同じなのかなぁなんて思ったり。(早大理工学部の複合領域コースは相変わらず穴場なんでしょうか…?)
「ネコ文II」という言葉も知ったり。
進振りがあるとはいっても経済学部がほぼ決定している文IIの学生は、1〜2年の駒場キャンパスで見かけることがネコよりも少ない、という意味なんだとか。
見かける順に「理I>文III>ネコ>文II」から来ているようですが、ネコよりも上は諸説あるようです。
以前、三田祭で慶應ツアーに参加したときのあまりのひどさに、他大ツアーはこんなものか、「♪(せーの)We are No.1!」
(←分かったら相当の早大応援マニア)という先入観がありました。
が、東大ツアーが去年7月にスタートしたばかりだというのに予想以上に充実していて、早稲田もうかうかしていると長年のノウハウの蓄積なんてあっというまに追い抜かれてしまいますぞ……なーんてことは、OBが思ったってどうしようもないんですけれども。