タクシーで帰る

 高崎駅からタクシーで帰りました。
 歩いたって15分の距離なんですけど。

 ……時間は午前2時半。


 めずらしくこんな時間まで延々と高崎駅西口にいて、さぁ帰ろうかと駅を通り抜けて東口へ出てみれば、まったく人通りのない駅前。

 学生時代、こういう時間に千葉県の本八幡駅周辺を歩く、という経験を何度かやっていました。
 人気(ひとけ)のない場所を歩くわけですから、なにやらおっかない人にからまれないか、なるべく明るい道を選んで歩いていたものです。


 さて時と場所は移り変わって、高崎駅から社員寮までの道のりを思い浮かべたとき、薄暗い道を歩かなければならないのは必至です。

 このご時世、こんな真っ暗なところでどんな人が待ち受けているやら分かったものではありません。
 心配のし過ぎなのかもしれませんけれど、「少年数人組、酔っ払いサラリーマンに暴行、金品持ち去る」という新聞の見出しが目に浮かぶわけです。


 そういう目に遭って有り金を全部とられるのに比べたら、タクシー代660円なんてどれだけ安いものか。
 普段タクシーなんか乗りもしない私にとっては大決断の瞬間でありました。


 駅前で客待ちをしている一台に「近くですけどいいですか」と声をかけて乗車。

 歩けば15分ですが、クルマなのであっという間です。

……さて支払い、のところで「クレジットカード使えます」の文字を見て、カードで、とお願いしたら、運転手さんはカードを一瞬手にとって眺めたと思うと、面倒そうに「(料金は)いい」と一言だけ口にして返してくるのです。


 はぁ? いくら1メーターの客は面倒、しかもカード払いで余計に面倒というのはあるにしても、本当にお金要らないの?? だったら現金で支払っても……と、内心思いつつ、「え、いいの?」と思わずタメ口をきいてしまいましたが、やはり「いい」と言うのでそのままクルマを降ります。


 歩けば15分の距離、しかも毎日歩いているところをタクシーに乗って660円を支払う、という大決断をしたのに、結果としてタダで乗れたことになんだか拍子抜けになりながら部屋へ戻って床についたのでした。
author by よんなん
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