伊予鉄道 郊外電車の運転にまつわる設備ほか

 伊予鉄道の郊外電車に乗ってまず度肝を抜かれたのは発車のシーンです。

 古町から乗った高浜ゆきの最後部で観察していると、車掌が客室のドアを閉めると合図なしに勝手に電車が走り始めます。


 厳密には「勝手に」運転士が発車させるのではなく、ドアが閉まると運転席にランプがつくのでそれが合図、というわけです。……旧国鉄のこのやり方を継承したJR各社が次々とブザー合図へ改めているなか、このやり方をしている私鉄があったのか!

 Wikipediaの「車掌による出発合図」によると、我が国ではJR東日本と伊予鉄道だけだそうです。


 おまけに、見ていると車掌が車イスの乗客対応をした駅では、対応が終わると車掌は客室ドアから車内へ入り、車掌が乗務員室へ戻る前に運転士が先頭の乗務員室のスイッチでドアを閉めているじゃありませんか。

 臨機応変といえば臨機応変なのですが、この会社の規程はどうなっているんだ!? と驚くばかりです。

 「知らせ灯式」当時のJR東海でも、飯田線や身延線の車掌が旅客対応をするため運転士がドアを扱うケースはありましたが、その場合は車掌が乗務員室へ戻ってからブザー合図で発車でした。(3年前に乗ったときの記事


 また、この高浜ゆき電車は、社内便(?)の輸送列車らしく有人駅で車掌さんが駅員さんへ手提げ袋を手渡しているのですが、駅員さんはホームに出てくるのではなく、車掌さんも駅に着く前から乗務員室の扉を開け放して(この到着姿勢は京成電鉄などでも見られますが)まだ走っている電車から、地上で手を伸ばしている駅員さんへポーンと渡しています。

 まるで往年の通過タブレット授受のよう、というか、曲芸のよう、というか……。


 高浜駅から折り返して横河原へ向かう先頭で観察していると、運転士は「知らせ灯」を合図に発車させているというより、「待ちノッチ」です。
(ドアが閉まらないと電車が動く電気回路がつながらない=ドアが閉まると回路がつながるので、あらかじめアクセルを踏んでいるようなもの)

 待ちノッチはワンマン運行の路面電車でときおり見られる手法で、市内電車(路面電車)も経営している伊予鉄道らしいといえばらしいのかもしれませんが、いまどきJR東日本だってそんな操作しているのを見たことはありません。

 ただ、途中から添乗者が乗ってくるとランプが点くのを待って電車を動かしていたので、正式にはそちらが正しいのでしょう。(たぶん)


DSC00229.jpg さて、設備に目を転じると、不思議なのが直線区間上にある速度制限標識と、(おそらく)速度照査用の保安設備。

 地上子(写真の線路上にある白い板)の上だけ徐行して、過ぎるとまた加速していたので、踏切の鳴動時分確保のためか何かでしょうか? それにしてはずいぶんあちこちにありましたが……。

 遠方信号機に「減速」が現示されて、次に見える場内信号機が「注意」をすっ飛ばして「警戒」なのは、これで正しいんですが、群馬在勤時に乗り歩いたローカル線では見たことがなかったです。勉強になりました。

#単線区間で行き違い駅へ列車が同時に進入するときは一定の条件を満たさない限り場内信号機は「警戒」を現示して25km/h以下で進入させる……と、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」(国土交通省鉄道局長通知 平成14年3月8日国鉄技第157号)に書いてある

 とはいえ、行き違い駅はすべてホーム手前付近に「25」の速度制限標識と、やはり速度照査用(と思われる)設備があったので、場内「進行」で勢いよく進入してきても、ホームにはゆっくり入ってくることになります。


DSC00268.jpg それはそうと、やたらあちこちに「電圧確認」と書いてあるので、過去に電圧にまつわる何かがあったのだろうか?? と思って後で調べたら伊予鉄道は高浜線だけ600Vで郡中線・横河原線は750Vなんだそうで。

 高浜線は市内電車(600V)との平面交差が2か所あるからでしょう。

 ……で、実際の運行系統は高浜線(600V)と横河原線(750V)が直通運転しているんですけども、高浜から横河原へ向かう電車の運転席の後ろでかぶりついていた限りでは、特に何かのスイッチを扱ったふうもなく、自分も電圧計の変化には気づかず。。。(知ってなきゃ見ねーよそんなもん!)

DSC00248.jpg Wikipediaの「伊予鉄道」を見ると、特に電車を複電圧対応として作ってあるのではないそうです。

 主回路は直流600Vが入力されようと750Vが入力されようと電車が動くのには問題ないとして、サービス機器用の「電動発電機」の類はちゃんと安定した電圧・周波数の交流100Vなどを出力してくれるのかしらん?

DSC00219.jpg というか、直流電化鉄道の架線電圧って、平気で100〜150Vくらいは上下しますよねぇ? 「電圧確認」も何も、600Vも750Vもその「振れ」の範囲では……という気もします。

 写真は、高浜駅(=600V区間)に停車中に撮った写真にたまたま写りこんでいた電圧計。……高圧(=架線電圧)はおよそ700V、低圧(=車上で変圧)は110V付近をさしています。

 んー、そんなだったら電圧計をもうちょっとちゃんと見ておけばよかった!


DSC00265.jpg ちょっぴり横道ですが、700系(旧京王5000系)の運転台に

「快適運転」
「大きな声で指差確認」

と書いてオレンジ色の制服を着たお兄さんが笑顔で手を挙げているイラストのシールが貼ってありました。

 京王電鉄の古い制服は濃い茶色だったので、たぶん色あせてオレンジになっちゃった京王時代に貼られたステッカーじゃないかと思うんですが、少なくとも伊予鉄道には「大きな声で指差確認」なんてことしてる運転士いません。(笑)

#オレンジ色の制服というと東武鉄道の旧制服がそうでしたが……関連が思い当たらない


DSC00246.jpg あとはめぼしいものといえば、伊予市駅に「出発信号」「出発合図」の札がついた表示灯があったくらいでしょうか。

 「出発合図」のランプが点いても、車掌さんはホームへ上がってくる階段をのぞきこんで乗客を待っていましたが……誰がどうやってこのランプをつけるしくみなのかは、そこまで観察する気力はなかったです。
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伊予鉄のギャップ

DSC00233.jpg 別項にまとめますが、伊予鉄道の郊外電車線に乗って乗務員さんの仕事ぶりを見ていると、「いまどきこんなのありか!」と思う作業の連続です。
(ありだからやってるんですが)

 よく表現すれば「古き良き時代の地方鉄道」がそのまま残っているような感じです。


 ……伊予鉄道の鉄道部門は黒字経営だそうですから、業務のしくみがいきなり大きく変わったり、存廃の話が出る心配は当分なさそうです。


 駅舎も、中には建て替えられて近代的になっている駅もありますが、映画のロケに使われそうな年代物の駅がほとんどです。

 駅の入り口に「不良図書投函箱」(白ポスト)があるなんて……まぁ白ポスト自体は置いてある場所には置いてありますが、こういう駅舎と組み合わせると、昭和4〜50年代にタイムスリップしたかのようです。


 一方で、伊予鉄道は郊外電車・市内電車・バスの全路線でIC乗車券「ICい〜カード」が使え、しかもIC乗車券専用運賃(普通運賃の1割引)まであります。

 なんと、「モバイルい〜カード」は「モバイルSuica」より早かったのです。
(おサイフケータイ対応は日本の鉄道・バス事業者で伊予鉄道が最初)

 一日乗車券が400円で発売されている市内電車は、当日中にICい〜カードで繰り返し乗ると自動的に判定されて、400円で頭打ちとなる先進的なサービスも提供しています。


DSC00249.jpg 運転に関する業務や設備が前時代的にすら見える場面が多数あるのに、営業面でこれほど先進的な取り組みをしているこのギャップが、その方面のマニアである自分には軽い衝撃でした。

 どうでもよいですが、高浜駅の目の前には港があるのに、郡中港駅は駅名とは裏腹に駅を出ても港があるような気配はなく、道の向かい側にJR伊予市駅があるのにびっくりです。
(郡中港はこの駅の西1kmのところのあるものの、現在定期航路がないそうです)
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伊予鉄 高浜駅にて

DSC00210.jpg 中学・高校の頃にJR線の乗りつぶしをしていた頃は、行き止まり駅に来ると折り返しの列車ですぐに引き返していたものです。

 今回の伊予鉄道郊外電車の乗りつぶしでは、1本見送ることにしました。

 各線とも20分間隔です。


 ……といっても、特にやることがあるわけでもなく、駅前に港があったので、風に吹かれながら海を眺めてぽけ〜っとしていました。


 日差しは暑いですが、気分がいいです。

 きのうの夜、東京駅を出発したばかりなのに、もう、こんな場所でこんなことをしていられるなんて。


 あとは、駅の斜向かいに郵便局があって、16時を過ぎて貯金窓口は終わっていたものの、風景印があるというお話で50円のはがきに押してもらいました。


DSC00211.jpg 離島への船が出るこの高浜港のほか、600mほど北に本州・九州への船が出る松山観光港があり、この駅は乗り継ぎ客で賑わうことがあるのかどうか。

 飲料の自動販売機はICい〜カードが電子マネーとして使えるので、この売店もこんな見た目(失礼)でも何気なく電子マネー対応だったりするのだろうか……と思いきや、意外にも非対応。

DSC00202.jpg 20分後にやってきた電車に乗って、引き返します。

 20分前の電車と同じ形の電車でしたが、あとで調べたら伊予鉄道に2編成しかない自社発注車だそうで、なかなかめずらしいものに乗れました。(そのほかの郊外電車はすべて京王電鉄からの譲渡車だそう)
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伊予鉄道のICい〜カード

 松山に15時過ぎに着きました。……ホテルにはチェックインしましたが、まだ日が高いので外出して伊予鉄道の郊外電車を乗り歩くことにします。
(市内電車=路面電車はもう全部乗った……はず)

DSC00859.jpg 伊予鉄道にはICカード乗車券「ICい〜カード」があり、ICカードで乗ると運賃1割引(10円未満四捨五入)、記名式ICカードならデポジット500円不要、という他のICカード乗車券にはない特徴があります。

 伊予鉄のICい〜カード特設ページで事前に調べたら、JR松山駅に近い記名式ICい〜カードの発売駅は古町駅(松山駅からおよそ1.1km)だったので、松山駅前のホテルから歩いて行きました。


DSC00201.jpg 古町駅は着いてみればコンビニ「い〜ショップ」(ヤマザキショップ)併設で、駅の営業窓口はなく、記名式ICい〜カードはコンビニレジの一角で受付・発売でした。

 伊予鉄道ウェブサイトには記載が見つけられなかったのですが、実は「ICい〜カード」には4種類の柄があり、レギュラーのほかに「坊っちゃん列車」「マドンナバス」「くるりん」の観光用絵柄が用意されていることが、申込用紙で判明。

 しかし、古町駅ではレギュラーのみの取り扱いで、選択の余地なく購入。初回購入額2000円は他の地域のIC乗車券と同じですが、記名式はデポジット0円なので全額使えます。


 さっそくやってきた高浜行きに乗って乗りつぶし開始です。

 JRですらワンマン運転をやっている地方の私鉄……という勝手なイメージでワンマン運転かと思い込んでいたら、車掌さんが乗っているツーマン運転です。(しかも鉄道は黒字らしい)

 車掌さんはいわゆる「車掌かばん」(大きながま口)をたすき掛けしていて、こまめに車内を巡回しては切符を売り、無人駅では集札をしています。(何気なく有人駅も多い)

DSC00204.jpg 高浜駅では4種類のICい〜カードを取り扱っているので、古町駅から無札で乗って車掌さんからキップを買い、これは降りるとき記念にもらってコレクションにし、高浜駅で観光用図柄のICい〜カードを購入する、という方法もあったか……高浜までの運賃は350円でIC割引320円だけど30円だったら、といまさら思ってもしょうがないです。

 写真は高浜駅にあった飲料の自動販売機。……ICい〜カードはもちろん電子マネーとして使えます。(上記の「い〜ショップ」でも)
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四国って意外と近い

 四国へ行ったのは、確か中学3年か高校1〜2年生のときだったかに四国のJR線を乗りつぶして以来(のはず)で、ずっと足が遠のいていました。

 あのころは京都始発の九州・四国・山陰行きの夜行列車があって、「青春18きっぷ」で四国へ行く(個人的な)定番は昼に東京を出て東海道本線を延々と下り、京都で「ムーンライト高知・松山」をつかまえるルートで、四国入りは翌朝だったのです。

 それでなんとなく「遠い」というイメージを持っていたのですが、実際に時刻表をめくってみると、青春18きっぷを使って「ムーンライトながら」号から乗り継いでいくと松山には17:12に着いて、道後温泉に泊まるにはちょうどよい時間です。

 今回は、夜行バスに乗って京都駅6:08発の快速電車から「18きっぷ」の旅をスタートさせたので、松山へはまだ日も高い15:06に着いてしまいます。


DSC00146.jpg 大阪、姫路と電車を乗り継いで、岡山から瀬戸大橋線へ。

 瀬戸大橋が雄大な吊り橋であるのを堪能できるのは上段を走る道路のほうで、鉄道で渡ると「ただの鉄橋でしかない」とは耳にしますが、車窓を見ながら、さだまさしの「帰郷」という曲が脳内で再生されると

今も あの海は 青く 澄んでいるか
オリーブ色の風は 今日も吹いているか
あの橋を渡って 故郷へ帰ろう

今もあの空は 島の影を写し
鳥たちは白い船を かすめて飛んでいるか
あの海を渡って 故郷へ帰ろう

「あ〜〜のはしをわた〜って ふ〜るさとへかえ〜ろぉ〜」という一節で(香川出身じゃなくても)泣けてきます。

#本州と四国を結ぶ橋は現在3ルートありますが、香川のイベントとのタイアップ曲であることと、歌詞や曲の発表時期(1996年)を考えると、「あの橋」は瀬戸大橋と思って間違いないはずです。


DSC00163.jpg 坂出で乗り継いだ観音寺行きは121系電車。……旧国鉄が1987年3月のダイヤ改正で“JR四国への置き土産”的に製造・投入した(JR発足は1987年4月)ような電車です。

 JR発足前後の似たような電車には「JR最初の新車」JR東日本の107系があり、121系ともども当時の国鉄〜JRの経営状況を鑑みて廃車発生品が多数流用されているのが特徴です。

 ……が! 107系が「車体以外の構造はほとんど165系」なのに対し、121系には電気指令式ブレーキが取り入れられていたとは。

 他の国鉄設計の電気指令式ブレーキ電車(205系や211系)の運転台はハンドルが固定された「ブレーキ設定器」なのに対し、121系のはハンドルが空気指令式車と共通の取り外せるタイプです。……電気指令式でもハンドルが取り外せるのは民鉄ではめずらしくありませんが、国鉄〜JRの車両では他にありましたっけ??


DSC00172.jpg 観音寺(かん「お」んじ)で乗り継いだ松山行きは7000系電車。

 1990年にJR四国が新製した電車ですが、東急電鉄に詳しいマニアの方が「当初、東急で廃車になった東急7000系電車を購入する(東急からJRへ払い下げてもらう)予定だったのでそのまま7000系と名づけられた」と言っていたのを聞いたことがあります。

 ……本当なのかどうかは知る由もないものの、7000系新製の9年後、JR四国はJR東日本で廃車となった113系電車を購入しています。

#なお、JR四国による「**00系」という民鉄のような形式名は、2000系気動車が先


DSC00178.jpg 「旅行といえばボックスシート」という向きもあるようですが、一人旅だとロングシートも悪くないと思っています。

 平成に入ってボックスシートとロングシートの千鳥配置を取り入れる車両が出はじめ、この電車もそうです。……観音寺駅でドアが開いた瞬間にボックスシートはそれっぽい人が真っ先に座ってしまいましたが、向かい側のロングシートから真正面に瀬戸内海を眺めながらの移動は、何気なくこちらのほうが勝ち組では? なんて思っちゃったり。

 15時過ぎに松山に着いたら、さっそくホテルにチェックインして大きめの荷物は置いて、身軽になって活動開始です。
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アンパンマンの顔は本当に食べられる

20110906-104427.jpg JR坂出駅にあるパン屋「ウィリーウィンキー」でアンパンマンとその仲間達が売られていたので、思わず買ってしまいました。(各200円)

 ウィリーウィンキーはJR四国系列のパン屋で、JR四国は「アンパンマン列車」を走らせたり「アンパンマン列車スタンプラリー」もやっていますから、まさかパチモノということはないでしょう。たぶん。

 公式ページにも「人気商品」の10位に堂々と載っています。


DSC00188.jpg いや〜、しかしそれにしても公式にアンパンマンの顔を本当に食べられる日が来るとは〜。

 ありがとうアンパンマン。

 ちなみにしょくぱんまんには、実はジャムが仕込んでありました。……アンパンマンの登場人物に「ジャムパンマン」がいないのはそういうことだったのか、、、(推測)


 このあと、高知駅など四国内のJR駅で同様にこのパン屋と商品を見かけることができ、高知駅のウィリーウィンキーでは5種類買うと特製のアンパンマンケースに入れてくれるようです。

 子連れの旅行なら、食事そのものがいい思い出になり、箱はよいお土産になりそうですね。
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よんなん的きょうの見どころ(2)

 きょうの見どころ2つ目は、むしろこちらがメインともいえる「JR四国が導入した『客室乗務員』によるドア扱い」です。(客室乗務員のブログ

 現在、JR各社それぞれが、車掌ではない「客室乗務員」を列車に乗せています。

 車内販売会社が担当するJR東日本とJR東海はもちろん、JR北海道、JR西日本、JR九州の社員(契約社員)である客室乗務員も、車掌に相当する業務は車内改札や旅客案内に限られています。

 そこへ、JR四国が去年(2010年)3月のダイヤ改正から、「ドア開閉」「ホーム確認」もこなす「客室乗務員」を「車掌に代えて」導入すると発表したのです。(プレスリリース)……これは私にとって衝撃的な大ニュースした。


IMGP1335.jpg JR九州にも、車掌が乗っていなくて運転士と客室乗務員しか乗務員がいない列車はありますが、運転上は「ワンマン運転」に該当して(特急列車でも)先頭に「ワンマン」表示を出してドアは運転士が操作します。
(写真は2006年6月に乗った「九州横断特急」)

 なぜなら、国土交通省の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」第十条に

2  鉄道事業者は、列車等の運転に直接関係する作業を行う係員が作業を行うのに必要な適性、知識及び技能を保有していることを確かめた後でなければその作業を行わせてはならない。

>必要な適正(略)を保有していること
>必要な適正(略)を保有していること
>必要な適正(略)を保有していること

とあるからです。

 「必要な適正」の詳細は、国土交通省の課長通達「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の制定に伴う取扱いについて」(平成14年3月8日付 国鉄技164号)第十条が定めていて、それなりのハードルを要求しています。

 白い文字で引用しておきますので、そこまで関心がある人は反転させて読んで下さい。
(機種依存文字(丸囲み文字)は丸を取っておきます)

(以下引用)

(2)適正の確認について
1 身体機能検査及び精神機能検査の2種類を実施すること。
2 身体機能検査については、視機能、聴力、疾病、身体機能等の状態を各職種に応じて1年に1回以上行い、検査の結果が作業を行うのに支障がないことを確かめること。
3 精神機能検査については、作業素質検査(クレペリン検査)、照合、置換、分割、推理検査、反応速度検査、注意配分検査等の中から各職種に応じて勘案した検査を3年に1回以上行い、検査の結果が作業を行うのに支障がないことを確かめること。この場合において、作業素質検査は必ず行うこと。

(引用ここまで)

……つまり「車掌」と「客室乗務員」の違いは、この適性検査が必要か否か、さらに言い換えれば、「運転に直接関係する作業」をするのかしないのか、ということになります。

 運転に直接関係しない作業であれば、誰でも就くことができます。


 これまでのJR各社の先例から察するに、ドアの開閉は「運転に直接関係する作業」だったのでしょう。

 確かに、旧国鉄以来、電車列車の出発合図は「知らせ灯式」(ドアがすべて閉じると運転席のランプが点くのでそれが合図)でしたから、列車のドアを閉めることは「鉄道信号」としての「合図」を表示することを意味しました。
(上記の省令第二条の十六で、「鉄道信号」は「信号、合図及び標識」と定義されています)

 ……これでは客室乗務員がドアを扱うわけにはいきません。

 ところがこの点は、JR東日本以外のJR各社で出発合図がブザー式に変わり、ドアを閉める行為そのものは特に「合図」としての意味を持たなくなりました。(推測)

ここで(推測)としたのは、都営地下鉄が「知らせ燈の点燈及び車内ブザーの適度音1声」と定めていた例があり、部外者の立場で観察しているだけでは区別がつかないからです。これだと閉扉操作も合図に含まれることになりますが、ひとまずここはウィキペディアの「車掌による出発合図」にある通り「ブザー式」である前提で話を進めます。(都交通局の運転取扱心得はかつて都の例規集に掲載されていた)

 しかし、客室乗務員がドアを閉めたら、運転士はどのタイミングで列車を出発させるのでしょうか? 客室乗務員は「鉄道信号」としての「合図」を出すことはできないのです。


 前置きが長くなりましたが、これをこの目で確かめたい……というのがポイントでした。


DSC00148.jpg 運よく、岡山駅9:32発の高松ゆき快速「マリンライナー17号」で、岡山から乗務してきたJR西日本の車掌・車掌見習さんと児島駅で交代したJR四国の乗務員が、まさに「客室乗務員」さんでした!

 見てみると、なんのことはない「小田急方式」(と私が勝手に呼んでいる)で、

・ホームに立ったまま旅客の乗降終了を確かめて、スイッチ操作で客室の乗降ドアを閉める
・電車に乗り込んで乗務員室のドアを閉め、窓から顔を出す「亀の子」の体勢をとる
・ブザー「・・」を鳴らすと電車が動き出す
・ホーム末端まで顔を出している

このとき、ホーム末端までの「ホーム確認」中に手がどこにあったのか、これを見そびれたのが非常に悔やまれます! 車掌用ブレーキに手をかけていたのか、ブザーに手をかけていたのか、それとも何にも手を添えずに握り棒でも持っていたのか、、、

 児島駅を発車して車内巡回にはいった客室乗務員さん(女性)の足元を見ると、ヒールつきの靴です。……つまり、事故発生時に二重事故防止のため発生箇所へ向かってくる別の列車を停止させる(ときには線路の砂利の上を走って知らせに行く)ことは、彼女の業務ではないのです。

 それにしてもブザー合図「・・」は何なのか……という疑問を持ちつつ、坂出駅で電車を乗り継ぎました。

 乗り継いだ電車には「車掌」が乗っていて、出発時のブザー合図は「―」です。

 やはり客室乗務員の「・・」は意味が違うのです。


DSC00177.jpg あとで乗務員室に掲示されていたブザー合図一覧が目に入ってようやく納得です。……それによると

車掌スイッチを「閉じ位置」にせよ 又は した  ・・

ははぁ……なるほど〜、これはJR四国の担当者は考えましたねぇ。。。

 これはもともと、折り返し駅で客室ドアを閉めずに折り返す場面でみられる、「車両整備のための」合図で、運転に直接関係する「鉄道信号」としての「合図」ではありません。

 これを流用して、客室乗務員は運転士へ「車掌スイッチ(=客室ドアの開閉スイッチ)を『閉じ位置』にした」と言っているだけだ、「鉄道信号」にあたる「出発合図」ではない、という理屈が成り立つのですね。(客室乗務員には、車掌スイッチを扱った直後ではなく、自分が確実に電車に乗ってから合図を送るよう指導しておけばよいでしょう)

 そんなもん、ドアが閉じれば運転席にランプが点くので、「・・」の合図を送るまでもなく明らかなことですから、これはおそらくJR四国と国土交通省でかなりやりあったのではないでしょうか。(推測)


 そして客室乗務員による「ホーム確認」は何を意味するのか、「ホーム確認」中の客室乗務員の手はどこにあったのか……これは非常に気になるところです。(本当に四国まで出かけてどこ見てたんだ自分は!)

 しかし、いまどき駅や踏切の非常ボタンは誰でも押せるのと同じで、客室乗務員が異常を発見したら何らかの手段(ブザーなど)で運転士に知らせて列車を止めてもらうなり自分でブレーキを操作して止めてもよいのかもしれません。(推測)

 ……んー、やはり、客室乗務員はブザーに手を添えていたのか、ブレーキに手を添えていたのか、、、見ておくべきだった、、、


 ちなみに「車掌」でもブレーキではなくブザーに手を添えて状態看視をしている例はあります。(名古屋市営地下鉄など)


 8月にJR四国が第4期の客室乗務員募集をしていて、ウェブページ(←9/16現在リンク切れ)に業務の内容が写真つきでかなり詳しく出てたんだけど……もう消えてるっ!
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よんなん的きょうの見どころ(1)

DSC00138.jpg 今回の旅行で押さえたい最大の「見どころ」は二つです。

1)JR西日本が出発合図を「ブザー式」に改めたあとの車掌の基本動作
2)JR四国が導入した「客室乗務員」によるドア扱い

 詳しい話はさておき(こんなのがテーマの時点でかなり詳しいですが)、JR旅客6社のうち、在来線電車の出発合図で旧国鉄以来の「知らせ灯式」を続けているのはJR東日本だけになりました。

 先月の旅行で見た、JR東海の基本動作は「小田急方式」(と私が勝手に呼んでいる……以下同じ)でしたが、JR西日本の基本動作は、ブザー合図後すみやかに乗り込んで窓から顔を出す「亀の子」になるというもの。

 「亀の子」の体勢を取ってからブザーを送る「小田急方式」は、机上の理論では問題がなくても、現場で見るとムラ・ムダがあり、ムリのもとだと(個人的に)思う部分があります。
(「小田急方式」を取り入れている他の鉄道会社では必ずしも全員に守られていない事例も散見されるのは、ムリがあるからでしょう……たぶん)

 実際問題、車掌のブザー合図を運転士が聞いてから電車が動き出すまで、車掌が「亀の子」の体勢になる時間はじゅうぶんあると思います。
(小田急方式はこの時間が「ムラ」であり「ムダ」だと個人的に思っている)

 JR西日本のスタイルは、電車が動き始めてから「亀の子」へ体勢を変える(その間、車掌は結果としてよそ見になる)「東急方式」の変則版という位置づけになろうかと思いますが、大都市圏ではこのやり方が合理的ではなかろうかという気が(個人的に)します。


 ……京浜急行や都営地下鉄がホーム末端まで乗務員室の扉を開けたまま「半身」の体勢を基本にしているのが一番かっこいい(と個人的に思っている)けどな!
author by よんなん
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青春エコドリーム号

DSC00118.jpg 「青春18きっぷ」が3日分あまったので、また西のほうへ出かけよう……と思ったのですが、臨時の夜行列車「ムーンライトながら」号は東京駅発9月3日までです。

 また昼の東海道を下って1日分を消化するのはだるいので、JRバスの夜行「青春エコドリーム号」に乗って、18きっぷの旅は朝の京都駅から始めてみることにしました。

 2年前、あのときもJRの夜行バスで大阪へ行ったときは「プレミアムドリーム号」でしたが、こちらの「エコ」は「エコノミー」のエコです。(たぶん)

 普通運賃4000円が「エコ早割5」で3500円、さらに「高速バスネット」で予約したので「ネット割」が重複適用で3360円でした。

 正規の路線バスがツアーバス(ウィラートラベルで4000円)より安いのです。

DSC00120.jpg 4列シートと聞いて、貸切バスタイプの車両がくるのかと思いきや、冒頭の写真のように専用車で、シートピッチも3列夜行バス並みに確保されています。

 今回は1階席の最前列を選んだところ(「高速バスネット」で予約すると座席表から自分で選べます)、足は写真のように満足に伸ばすことができました。

 ただ、座席の幅は3列シート車と遜色ないものの、やはりひじ掛け1つで仕切られているだけなので、隣に体格のよい人が座ったりすると少々気になります。(今回がそう)

 逆に、自分も寝相に気をつけないと、いつの間にか隣の人に寄りかかっていたり……なんてこともありそうです。。。

#その点、女性専用車で運行の「青春エコレディースドリーム号」もあります

DSC00717.jpg リクライニングは、JR東日本の新幹線「MAX」の普通車1階席並みに倒れます。
(こちらの写真は、帰りの大阪駅9月8日発に乗った際に撮影)

 夜行バスの特徴でもある夜間消灯と合わせて、「ムーンライトながら」なんかよりはよほどよく眠れると思います。(鉄道の座席夜行は「減光」はしても消灯はしない)


 目下、主治医の先生から睡眠薬を処方されていて、それを服用したからとは思いますが、途中休憩も気づかず、2度ほど目を覚ましただけで京都駅前までぐっすり休めました。
author by よんなん
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旅行のしおり

DSC00113.jpg 個人旅行をするのにこんなのを作るなんて、たぶん初めてじゃないでしょうか。

 中学、高校生の頃でも、旅程表をワープロ打ちして持って行くくらいのことはやってましたが。

 いまやインターネットで地図そのものの検索はもとより、徒歩ルート検索もでき、旅行中に立ち寄ろうと思っている場所への行き方を調べては駅からの道順を地図に示してどんどんワープロソフト上にコピペしてしまいます。

 あと、旅行途中で乗り継ぎ時間がある駅での食事スポットなども、「食べログ」のようなクチコミのレベルでよければ、あらかじめ調べておけます。
(新たな発見の機会をみすみす捨てているのかもしれませんが……)


 まぁ、紙にプリントアウトして持っていく、という時点で前世代的なのであって、いまどきの人はスマートフォンでその都度調べてしまうのでしょうけれども。


 でも、こういうのは、作り始めてみると楽しいものです。

 今日になってふと思いついて作ったので、表紙までは手が回らず素っ気ないですが、、、ともあれ、こういうのを「自分で工夫して作る」ような「やる気」が出てきた、というのは、ここ数年の自分と比較してとてもよいことだと思いました。
author by よんなん
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