3歳の女の子に突撃するおじさん


 女性におじさんが突撃してくる、という話は往々にして聞きます。そうした人たちは男性には向かってこない、という話も同様に聞きます。確かに僕自身、道を歩いていておじさんに突撃された経験はありません。

 さらに僕が娘を連れて出歩いていると、突撃されるどころかモーゼの十戒かってくらい人ごみにサーッと道があいたり、電車に乗れば席を譲られたり、子育てって父親がやるほうが有利なのでは? と思うほどです。

 ……そうはいっても「突撃おじさん」に遭遇することは皆無ではなくて、片手で数えられる程度にはあります。

 突撃されるのは44歳男性の私ではなくて、3歳の娘なんですが。


 エスカレーターは右側を空けずに左右どちらも立ち止まって乗る、とは定着には程遠いとはいえ、鉄道会社はポスターで呼びかけていますし、埼玉県は条例まで作りました。

 成人男性が右側に立っていれば突撃されることはなかろう……と娘を左側に立たせて並んで乗っていたら、「ちょっと通るね」と娘に声をかけて、娘の脇をすり抜けてエスカレーターを上がっていくおじさんが。

 おいこら、「ちょっと通るね」って声をかける相手は僕だろうが。……ただし、僕は声をかけられたって断るんですけど。

 いい歳した大人が、エスカレーターで追い抜くのに3歳の女の子と40代男性を値踏みして女の子に声をかけて割り込んでいるわけです。

 「おいコラァ! エスカレーターは止まって乗るものだろうが!」と声をかけましたが、おじさんは行ってしまいました。

 行ってしまった、というか、女の子なら抵抗されないだろうと割り込んだつもりが横にいた父親から怒声が飛んできたんだから、まぁ逃げますよね。
(ただ、こちらもエスカレーターを駆け上がって追いかけることはしない)


 またある日、新宿から京王に乗って娘と並んで座っていたら、笹塚で乗ってきたおじさんが、なんと僕の隣に座っていた娘の上に座ろうとするじゃありませんか。

「あの、ちょっと、ここ座ってるんですけど?」

僕が声をかけるとおじさんは座るのをやめて、千歳烏山で降りて行きました。

 さすがに意味が分かりませんでした。無言で上から座ろうとすれば、おじさんのお尻を目の前に突き出された女の子は席をあけるとでも思ったのでしょうか。

 気味が悪いし関わりたくないから席を立つ人はいるかもしれませんが……。


 父親が横にいてこのありさまですから、母親が子供を連れているときはなおさらだと思うばかりです。
author by よんなん
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