父の生家が人手に渡っていた

 父の実家は新潟にあって、我が家の墓もその近くにあります。

 祖母が15年前に亡くなってからは空き家で、父の姉(私の伯母)がときおり手入れをしていましたが4年前に亡くなって以後、荒れる一方でした。

 父は以前から売る売る、隣の店が買って駐車場にしてくれる、と言いつつかれこれ15年で、2年前には脚を悪くして祖母の13回忌が新潟に来る最後なんじゃないかというあんばいでした。

 自分はどうせ売ったところで更地にして駐車場にされてしまうのなら活用したほうがいいんじゃないか、と妄想をふくらませていました。

 それより、家がなくなったら我が家にとって新潟はお墓しかない場所になってしまい、私の代くらいまではともかくその後の代になるとだんだん来なくなって無縁墓になってしまうのではないか、という考えもありました。

 更地化して駐車場にするにしても隅っこに小屋の一軒でも置いておいて立ち寄れるようにするとか、あるいは建物にお金をかけてビフォーアフターして一棟貸しの民泊にするのもいいなぁ……などといろいろ考えていました。

 妄想をするのはなかなか楽しいもので、実際に現地に足を運んで、近隣のスーパーやら城やその地出身の画家の記念館などの見どころを歩いたりしていました。

 ただ難点は駅から遠い(徒歩20分)ということです。自分が仮に新潟に赴任したとしてもそこに住んで電車で日々通勤するのは少々つらいなぁという立地ではありました。……城とか移転前の市役所や移転前の県立病院には近かったんですけどね。


 そんな昨年末、用件があって父に連絡を取ると新潟にいると言います。

 脚が悪くてもう遠出は無理だったのでは……? 

 しかも司法書士の先生のところにいるからあとにしてくれというので、これはもしや……と年が明けて父の実家の登記情報を見てみたら、ちょうど父が新潟に行った日から隣の店の名前と同じ苗字の方の所有になっていました。

 あーあ。


 もっとも、登記上は父と存命の姉妹の共有だったので、父の一存ではなく3人で決めたのなら孫としては口出しをするところではありません。

 さて長男として本気で考えなければならないのは、墓だけが残った新潟に誰が行くのか、というところです。……いまのところ自分が入るはずの墓ですから、無縁墓になっては困ります。

 父のことなのでへたをすると墓じまいまでやって、自身は海上散骨か何かにしてしまいそうでもありますが。


 墓じまいまではしないにしても、特に現地には資産を持たず、定期的に近隣の温泉で一族を集める場を設けるのも一つの考え方ではあります。

 ……別宅を持っていても維持費がかかるばかりで、そのぶんのお金で旅館に泊まれば豪勢なことができる、というのも一理あります。

 しかし実際には、家の手入れがされなくなってからはとんと誰も行かなくなって、13回忌でようやく実際に温泉に一族を集めはしたものの、これで最後にしましょう、みたいな話をしていた始末です。

 やはり、きちんと維持されていて一族が気兼ねなく立ち寄れる場があるのとないのとでは違うんだなぁと思っている次第です。


 元の家は駅から遠いという難もありましたので、駅とお寺の間に手ごろな物件でも探してみようか……などと新たな妄想を膨らませることにします。

 たぶん、家を買ってビフォーアフターするなら、どんなに小さい物件でもそれなりにまとまった自己資金も必要でしょうから、元手を貯めるのにも精を出したいです。
author by よんなん
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