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終戦記念日の靖国神社

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 お盆休みがある職場にいるのはおそらく今年が最後だろう、ということで、終戦の日の靖国神社へ行ってみました。

 あとで報道を見ると、例年なら7万5000人程度の参拝客のところ今年は20万人が訪れたとか。

 率直な感想は、外野が多すぎて「靖国で会おう」と約束した当時の人たちや、遺族の方々、それに「英霊」の皆さんがむしろ気の毒だ、ということです。

 それと、各メディアでは「終戦の日」ばかりクローズアップされますが、特に個人的な思い入れのない人が特定の日にお参りをするのであれば、むしろ「みたままつり」や「例大祭」のほうが趣旨にかなっているのではないかとも思いました。

 私自身、親族に戦争で直接命を落とした人がいるとは聞いたことがありませんので、上記の方々と比べれば外野の部類に入ります。



 よんなん総研のBBSに「藩主」などのハンドルネームで書き込みをしてくれる早大鉄研時代の友人と9時に九段下駅で待ち合わせたほか、16時には高校時代の別な友人と待ち合わせ。

 東西線を九段下駅で降りて待ち合わせの1番出口へ向かうと、すでに帰って来る人と大勢すれ違います。
 遅すぎたかなと思いつつ藩主と落ち合い、靖国神社へ。

 その道すがらで何やら配布している人がいるのでもらってみます。
 てっきり、靖国神社の示す歴史観に同意できない立場の人たちの主張かと思いきや、むしろ逆で、いわゆる保守的な主張をされる方々の新聞やらチラシやらそんなのでした。

 境内に入ると、右翼と思しき格好をした人たちもちらほら。
 靖国に参拝する地方議員の会だとかの幟も見えます。

 とはいえ、そんな人ばかりというわけでもなく、人の数だとか“客層”を見ると初詣の神社から晴れ着の人を引いて右翼のような格好の人を足した感じです。右翼の格好を至近距離で見ることは日常ではまずないので、人数の絶対数はそれほどでもなくても目立ちます。


 せっかく神社へ来たのでおみくじを引き、人々に混じってお参り。
 これだけ人がいればいろいろなお参りがあるようで、お経を読んでいる集団も見受けられました。


 さて、早大鉄研会員(OB)にとって靖国神社の「ご神体」といえば、バチ当たりにも英霊ではなく境内に飾ってある蒸気機関車。
 もともと北陸地方を走っていた機関車で、戦時中にタイへ送られ、戦後もタイ国鉄で1977年(昭和52年)まで活躍し続けたものが、現役を引退するときに関係者の手を通じて靖国神社へ寄付されているのです。

 私は靖国初体験ですが、以前来たことがあるという藩主について以前飾られていた場所へ行ってみれば、そこには(藩主が来たときにはまだなかった)話題の「遊就館」が建っています。
 入館料は800円。私はあとで待ち合わせをしている面々と来るつもりで、藩主にも入る気はなかったようなのでひとまず退散。

 境内にあった食事処で「靖国うどん」「靖国そば」(ともに800円)なるものを2人で賞味。
 冷房もなく、セミの鳴き声が響き渡るなか、ホーローの冷水器から注いだ水を飲みながら食べるそばの味は、古き日本を思い起こさせます。この値段の付け方や、味のレベルなど諸々を含めて。

 テーブルの隣では、珍走団(暴走族)の特攻服と見まごうばかりの格好をした右翼とおぼしき人たちが、お年を召したこの食堂のおばさんと和やかに話しています。
 別におばさんがこの人たちに賛同しているとかいうのではなく、ただ単に常連さんだから顔見知りだということなのだと思います。


 2時間ほど境内にいたものの、テレビでよく流れるような、プラカードを持って「反対反対」と主張する人たちを目にすることはできません。

 一方、やはりテレビで見たことのある旧軍の格好をした人もちらほら見受けられますが、どう見ても歳格好からして当時の人たちには見えません。単にそういうのが好きなのか、特定の主張を持った人たちなんだろうな、というイメージです。それでも、そういう人たちは目立ちますから、カメラを持った人たちは集まります。国内外のテレビ局や通信社、新聞社の腕章などをつけた人たちも群がっています。


 11時ごろ、次の用事があるという藩主とともに一度靖国神社をあとにします。
 帰りがけには法輪講と思しき人たちが機関紙を配っていました。(彼らは皇居一般参賀のときにも周辺で見かけました)


 再び訪れたのは13時ごろ。
 主要閣僚が参拝するのは午後からだ、とのことで、午前中には見られなかったプラカードの集団も見ることができるかもしれません。

……と思ったものの、人はさっきより多くなっていたほかは、特に先ほどと変わりなし。

 よく見れば、参道への入口の車道は警察が封鎖しており、デモ隊が入れそうな雰囲気ではありません。そんな状況下ではそういう人たちも来ないのでしょうか。

 とはいえ、あとで報道をチェックすると、神社近くで警官をひじで突いたとかプラカードで殴ったとかいう騒ぎがあったようで(読売新聞の記事)、どんな様子だったのかなぁという気はします。


 そのほか、やはり旧軍の格好をした人は目立っています。
 先ほど同様、どう見ても当時の人には見えない年恰好の人が多く、なかには子供にそういう格好をさせている人までいたり。

 きっと何らかの主張をお持ちの方なのかなぁと思うのですが、赤十字の看護婦の格好をした男性(と見受けられる)まで出現となれば、オタクイベントのコスプレと同類の気がしてきます。

 なお、この方、後日の東京新聞に取り上げられており、お名前や話の内容からして女性の方だったのかもしれません。


 境内で開催されている集会では、民主党の国会議員による勇ましい演説が行われています。


 30分ほど滞在して再び靖国神社を後にし、16時に高校時代の友人と合流して再び訪れました。

 境内の集会は終わりに近づいて、入手したプログラムによれば「みんなで『日本の歌』の合唱」のところ。「♪うさぎ追いしかの山〜」なんて歌っています。
 合唱ですから皆さん立っているのですけれども、中には座って歌わない人も。やはり何がしかの主張をお持ちの方なのでしょうか、あるいは(歌っている歌が歌ですし)ただ単に暑さで疲れただけなのか。


 親類が祀られているという友人がお参りを済ませるのを待ち、遊就館へ。
 大人800円ですが、大学生・高校生500円(夏休み中は中学生以下無料)。私は上の写真に写っている某大学通信課程の科目等履修生(=大学生)なので券売機で500円の入場券を購入。
 学生証の提示は特に求められず、この日は来館者が多いからか入館者の良心にまかされているようです。

 先ほど見られなかったSLはエントランスの無料スペースに置いてありました。それを横目に入場。

 中世からの日本の戦について人ごみに混じって見ていきますが、どうしても明治維新以降の記述に注目してしまいます。

 「南京事件」「便衣兵の摘発」という記述には、確かに特定の歴史観をお持ちの方が目を三角にしそうです。私も、これまで読んだことのある歴史書には書いていなかったことが書いてあったり逆に習ったことに触れられていなかったりして、少々衝撃を受けます。

 どれが正しいとか誤りとか、というのはさておいて、靖国神社の歴史観はこうですと示すこと、それを知ろうとすることは決して悪いことではないと思います。それに、この神社を訪れて一通り手を合わせた=この歴史観を全面的に支持している、という論理もおかしな話と思います。


 一日あちこち出歩いてすでにへとへとだったのと、閉館時間をすでに過ぎていたこともあって、かなりの早足で出口を出ました。

 公式サイトの「展示概要」にもある大砲やらの展示はわずかで、どちらかといえばやはり記述のほうがメイン…というか、この状況ではどうしても注目を集めてしまうように思います。

 それなら、わざわざ足を運んで入館料を支払わないと見られない(読めない)のもどうかなと思います。
 書籍にして販売してもいいでしょうし、Webサイト上に公開してじっくり読んでもらっては、と私は思いました。


 まぁそれにしても、どうせ来るならやはりすいているときに来たいな、と感じました。
 きっと、「英霊」に直接の思い入れのある方々にもこの日に静かに参拝したいと思う方は少なくないでしょう。そうした方こそこの場所では主役であるべきなのだと思うのですが、どうも靖国神社当局も含めて外野ばかりが目立ち過ぎるなぁ、という印象を持ちました。

 私ですか? 私のような「一目見たかった」というだけの者も今日は多かったはずで、次回来ることがあるとすれば、反省の意味も込めて私のような外野の者はこの日を避けてお参りしたいと思います。

 この日は靖国神社のお祭りの日でもなんでもなく、偶然、戦争の終わった日が、お盆という仏教から広まった民俗行事と重なっているだけなのですから。

author by よんなん
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