高校理科の復習
2011.04.07 Thursday | よんなん的日常
原子力発電所の件、仕事はプロに任せて自分はいま自分がやれることをやればいいよ、と特に関心は持ってませんでした。
新聞は毎日読んでいますが、圧力容器だの、何ベクレルだの、いろいろ書いてはあるもののどういう意味なのかはよく分かりませんでした。
ただ、店頭で売られているものは大丈夫なんでしょうし、蛇口から出てくるものもちゃんと飲めるのでしょう。
ところが、どうも政府と東京電力の言っていることや、その公式発表を垂れ流すだけの新聞は信用ならん、と言い出す人がちらほら出てきたわけです。
ラジオではフリージャーナリストが「政府が散々風評を垂れ流しておきながら、我々が真実を伝えればデマ呼ばわりする」と言い、mixi上では知人が「政府はこう発表してテレビ・新聞も大したことはないように報じているがだまされてはいけない!」みたいに書くわけです。
異なる2方面から同じ話を聞くと、ちょっとは影響を受けるわけですね。
原子炉工学や放射線医学の難しいことは無理でも、高校の理科で習った核分裂の話くらいまではおさらいしておこうか……と、図書館でそれっぽい本を読んでみました。
原子核=陽子+中性子とか、同じ元素でも中性子の数が違う同位体とか、不安定な同位体はα線(=ヘリウム原子核と同じ)やβ線(=電子+ニュートリノ)といった放射線を出して他の元素に変化(崩壊)する(=核分裂)とか、核分裂の際に熱が発生するとか、そういえば確かに習ったなーと思うことが多々ありました。
話はちょっと横道ですが、科学者(理学系)の究極の関心は「宇宙は何でできているか、どうやってできたか」でして、元素周期表の空欄=宇宙や地球ができたときは存在したけどすでに崩壊して地球上から消滅したと考えられる物質を「加速器」で人工的に作ってみたり、「スーパーカミオカンデ」で宇宙から降ってくる放射線などを観測しているのですね。
加速器は、元素に別の元素を高速で当てて核融合させて(ほぼ一瞬で崩壊して消えてしまうような)元素を作って観察するわけです。……合ってますか? >理学系の人
あほだなー、と思ったのはウランの話。
ウランにはそもそも安定な同位体がなく、常に放射線を出しながら崩壊し続けているんですが、たとえばウラン238で寿命が64.46億年(半減期44.68億年)と地球の誕生時(45億年くらい前)からの時間よりも長いので、そこらへん…といえば語弊があるでしょうが、鉱山を掘れば「天然ウラン」として出てくるわけです。
で、ウラン鉱石に0.7%ほど含まれているウラン235という同位体は、一度中性子を人為的に(←重要)外からぶつけると分裂して中性子を放出してその中性子が隣のウラン235に当たり、当たられたウラン235も分裂して中性子を放出して……これを暴走させれば爆弾やチェルノブイリ事故に、中性子の動きを一定の管理下におけば発生熱を有効利用できる原子炉になるわけです。
それはひとまず置いておいて、ウラン鉱石からウラン235を取り出した残り、これは単なる放射性同位体のかたまりで英語では「Depleted Uranium」(直訳:使い尽くしたウラン)なんですが、なぜかこれが日本語では「劣化ウラン」。またの名を「放射性廃棄物」。
誰ですかこんな翻訳したの。
掘れば出てくるものが、さも恐ろしいもののように聞こえるじゃないですか。
まぁ、このウラン238に中性子を照射するとプルトニウム239になってまた別の使い道が出てきたりするので、一定の管理下に置いておかないとおっかないわけですが。
さて、ここまでおさらいしてようやく新聞に書いてあることの意味が分かりました。
「被覆管」はウラン燃料を詰めた管で、外側を覆っている「ジルコニウム合金」は膨大な放射性物質を管の中に閉じ込めて漏らさない役目を持つけれど中性子線は透過するので、核分裂反応的にはないのと一緒。
「制御棒」は中性子線を通さない材質でできていて、ウラン235が分裂して放出された中性子が次のウラン235の分裂を引き起こすのを止める役割がある。→地震発生と同時に差し込まれて機能は果たしている。
で、ウラン235の連鎖的な分裂は止まって、チェルノブイリ型の暴走事故が阻止されたのは官房長官が言う通りなわけですが、現在問題になっているのは一度分裂したウラン235から発生した不安定な元素が崩壊しながら収束に向かう過程ですね。
ウラン235に中性子を当てる(←これは止まった)
↓
ウラン236(不安定)
↓
クリプトン92(不安定)とバリウム141(不安定)と中性子に分裂(一例)
↓
クリプトン92は寿命1.84秒でβ崩壊してルビジウム92(不安定)に
↓
ルビジウム92は寿命4.49秒でβ崩壊してストロンチウム92(不安定)に
↓
ストロンチウム92は半減期2時間40分で崩壊して……
↓
………
と、不安定な物質はみるみるうちに崩壊して限りなくゼロへ向かうわけですが、まだ熱を出すんです。
おお、まさに官房長官が会見で真っ先に説明していたことじゃないですか。
いや、すごいのはカンペを作った官僚かもしれませんけど。
で、電源がないので循環するはずの水が滞留してしまい、水は一定以上の熱を吸収すると蒸発するわけで、水が蒸発すると体積は5000倍になりますから圧力容器を内部から破壊してしまう心配が出てくるのですね。
そりゃぁ、水蒸気を逃がさなきゃいけないわけだ。
もちろん、一番望ましいのは、水を循環させてパイプ越しに(←重要)大気なり海水なりで冷やしてまた戻すことなんですが。
で、蒸気を抜いて圧が下がった(+水が蒸発した)ところへやれポンプだ放水車だ海水だなんだと水を入れてやるわけですが、どうやらどこかから漏れているぞ、と。
でも、ここで水を止めてしまったら同じことの繰り返しです。
また、水に晒し続けておかないとさらに温度が上がって被覆管が熱で融けてしまう(もしかしたらすでに融けてしまった)かもしれない、これはとにかく困るから冷却最優先で漏れるのはあとでどうにかするしかない、というのが現時点なんでしょうね、きっと。
点検中で止まっていた4号機の燃料貯蔵プールもほぼ同様、という理解でいいんでしょうか。>原発屋さん
それでもでもやっぱり、一番いいのは、湯になった水をパイプで外へ引き出してパイプ越しに(←重要)熱を大気や海中に逃がして、また内部へ戻して燃料(というか、被覆管)を冷やしてやることです。やっと分かりました。
とはいえ、循環システムを復旧させるのには、しばらく時間がかかるんだろうな。
それまでは漏れ出しも続きますよ……と。
なので、できるだけ回収してタンクへ溜める一方、大気や海中に漏れ出た放射性物質は計測して監視しましょう、政府や東京電力はその情報の出し方が下手だ、ということで「今北産業」的にはいいんでしょうか。(なげーよ)
でも結局、出てきた数字をどう評価するのか(食べるなとか、飲むなとか、逃げろとか)は、おとなしく専門の先生が言うことを聞くしか、自分にはできません。
あー疲れた……みんな分かって騒いでいるんだとしたら、すごいなぁ。
新聞は毎日読んでいますが、圧力容器だの、何ベクレルだの、いろいろ書いてはあるもののどういう意味なのかはよく分かりませんでした。
ただ、店頭で売られているものは大丈夫なんでしょうし、蛇口から出てくるものもちゃんと飲めるのでしょう。
ところが、どうも政府と東京電力の言っていることや、その公式発表を垂れ流すだけの新聞は信用ならん、と言い出す人がちらほら出てきたわけです。
ラジオではフリージャーナリストが「政府が散々風評を垂れ流しておきながら、我々が真実を伝えればデマ呼ばわりする」と言い、mixi上では知人が「政府はこう発表してテレビ・新聞も大したことはないように報じているがだまされてはいけない!」みたいに書くわけです。
異なる2方面から同じ話を聞くと、ちょっとは影響を受けるわけですね。
原子炉工学や放射線医学の難しいことは無理でも、高校の理科で習った核分裂の話くらいまではおさらいしておこうか……と、図書館でそれっぽい本を読んでみました。
原子核=陽子+中性子とか、同じ元素でも中性子の数が違う同位体とか、不安定な同位体はα線(=ヘリウム原子核と同じ)やβ線(=電子+ニュートリノ)といった放射線を出して他の元素に変化(崩壊)する(=核分裂)とか、核分裂の際に熱が発生するとか、そういえば確かに習ったなーと思うことが多々ありました。
話はちょっと横道ですが、科学者(理学系)の究極の関心は「宇宙は何でできているか、どうやってできたか」でして、元素周期表の空欄=宇宙や地球ができたときは存在したけどすでに崩壊して地球上から消滅したと考えられる物質を「加速器」で人工的に作ってみたり、「スーパーカミオカンデ」で宇宙から降ってくる放射線などを観測しているのですね。
加速器は、元素に別の元素を高速で当てて核融合させて(ほぼ一瞬で崩壊して消えてしまうような)元素を作って観察するわけです。……合ってますか? >理学系の人
あほだなー、と思ったのはウランの話。
ウランにはそもそも安定な同位体がなく、常に放射線を出しながら崩壊し続けているんですが、たとえばウラン238で寿命が64.46億年(半減期44.68億年)と地球の誕生時(45億年くらい前)からの時間よりも長いので、そこらへん…といえば語弊があるでしょうが、鉱山を掘れば「天然ウラン」として出てくるわけです。
で、ウラン鉱石に0.7%ほど含まれているウラン235という同位体は、一度中性子を人為的に(←重要)外からぶつけると分裂して中性子を放出してその中性子が隣のウラン235に当たり、当たられたウラン235も分裂して中性子を放出して……これを暴走させれば爆弾やチェルノブイリ事故に、中性子の動きを一定の管理下におけば発生熱を有効利用できる原子炉になるわけです。
それはひとまず置いておいて、ウラン鉱石からウラン235を取り出した残り、これは単なる放射性同位体のかたまりで英語では「Depleted Uranium」(直訳:使い尽くしたウラン)なんですが、なぜかこれが日本語では「劣化ウラン」。またの名を「放射性廃棄物」。
誰ですかこんな翻訳したの。
掘れば出てくるものが、さも恐ろしいもののように聞こえるじゃないですか。
まぁ、このウラン238に中性子を照射するとプルトニウム239になってまた別の使い道が出てきたりするので、一定の管理下に置いておかないとおっかないわけですが。
さて、ここまでおさらいしてようやく新聞に書いてあることの意味が分かりました。
「被覆管」はウラン燃料を詰めた管で、外側を覆っている「ジルコニウム合金」は膨大な放射性物質を管の中に閉じ込めて漏らさない役目を持つけれど中性子線は透過するので、核分裂反応的にはないのと一緒。
「制御棒」は中性子線を通さない材質でできていて、ウラン235が分裂して放出された中性子が次のウラン235の分裂を引き起こすのを止める役割がある。→地震発生と同時に差し込まれて機能は果たしている。
で、ウラン235の連鎖的な分裂は止まって、チェルノブイリ型の暴走事故が阻止されたのは官房長官が言う通りなわけですが、現在問題になっているのは一度分裂したウラン235から発生した不安定な元素が崩壊しながら収束に向かう過程ですね。
ウラン235に中性子を当てる(←これは止まった)
↓
ウラン236(不安定)
↓
クリプトン92(不安定)とバリウム141(不安定)と中性子に分裂(一例)
↓
クリプトン92は寿命1.84秒でβ崩壊してルビジウム92(不安定)に
↓
ルビジウム92は寿命4.49秒でβ崩壊してストロンチウム92(不安定)に
↓
ストロンチウム92は半減期2時間40分で崩壊して……
↓
………
と、不安定な物質はみるみるうちに崩壊して限りなくゼロへ向かうわけですが、まだ熱を出すんです。
おお、まさに官房長官が会見で真っ先に説明していたことじゃないですか。
いや、すごいのはカンペを作った官僚かもしれませんけど。
で、電源がないので循環するはずの水が滞留してしまい、水は一定以上の熱を吸収すると蒸発するわけで、水が蒸発すると体積は5000倍になりますから圧力容器を内部から破壊してしまう心配が出てくるのですね。
そりゃぁ、水蒸気を逃がさなきゃいけないわけだ。
もちろん、一番望ましいのは、水を循環させてパイプ越しに(←重要)大気なり海水なりで冷やしてまた戻すことなんですが。
で、蒸気を抜いて圧が下がった(+水が蒸発した)ところへやれポンプだ放水車だ海水だなんだと水を入れてやるわけですが、どうやらどこかから漏れているぞ、と。
でも、ここで水を止めてしまったら同じことの繰り返しです。
また、水に晒し続けておかないとさらに温度が上がって被覆管が熱で融けてしまう(もしかしたらすでに融けてしまった)かもしれない、これはとにかく困るから冷却最優先で漏れるのはあとでどうにかするしかない、というのが現時点なんでしょうね、きっと。
点検中で止まっていた4号機の燃料貯蔵プールもほぼ同様、という理解でいいんでしょうか。>原発屋さん
それでもでもやっぱり、一番いいのは、湯になった水をパイプで外へ引き出してパイプ越しに(←重要)熱を大気や海中に逃がして、また内部へ戻して燃料(というか、被覆管)を冷やしてやることです。やっと分かりました。
とはいえ、循環システムを復旧させるのには、しばらく時間がかかるんだろうな。
それまでは漏れ出しも続きますよ……と。
なので、できるだけ回収してタンクへ溜める一方、大気や海中に漏れ出た放射性物質は計測して監視しましょう、政府や東京電力はその情報の出し方が下手だ、ということで「今北産業」的にはいいんでしょうか。(なげーよ)
でも結局、出てきた数字をどう評価するのか(食べるなとか、飲むなとか、逃げろとか)は、おとなしく専門の先生が言うことを聞くしか、自分にはできません。
あー疲れた……みんな分かって騒いでいるんだとしたら、すごいなぁ。