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106急行とJR山田線の謎

IMGP1301.jpg 八戸から八戸線〜三陸鉄道北リアス線経由で宮古へ来ました。

 宮古からは、JR山田線の盛岡行きに乗り継ぎます。

 この山田線の盛岡〜宮古は、写真のとおり「超」がつくほどのローカル線でして……

・閉そく方式は日本でここにしか残っていない非自動の「連査閉そく方式」
 (その筋の人の話では、この装置が壊れたらもう直せる人がいないとかどうとか……)
・「ワンマン化する設備投資すら値しない」らしく、全列車に車掌が乗っている
・盛岡〜宮古を直通する列車が1日4往復しかない

などの特徴があります。


 ただ、この区間に旅客流動がないのかというと全くのウソで、30年以上前から国道106号線を走る「106急行」という路線バスがあって、現在1日に23往復も走っています。


 それぞれ比較してみると、JR山田線は運行本数以外に全く遜色がないんですよ。

        JR     106急行
片道運賃 1890円   1970円
往復運賃 3780円   3640円
所要時間 2時間19分 2時間10分(普通列車の平均と急行バスの比較)
       1時間59分 1時間55分(最速の快速「リアス」とS特急バスの比較)
運行本数 4往復 orz  23往復!

なぁんだ、往復運賃なら106急行が安くてスピードも速いんじゃねぇか、と言う向きもあるでしょうが、片道運賃ならむしろ安いうえ、新幹線に乗り継ぐなどすれば運賃は通し計算で山田線部分の値段はさらに安くなります。


 たとえば宮古から東京を往復すれば……

山田線+東北新幹線 17200円(+新幹線の特急料金)
106急行+東北新幹線 20020円(+新幹線の特急料金)

と、3000円近い差がつきます。通常運賃だけで十分競争力のある価格設定ですよね。


 所要時間だって、5〜10分レベルの差ですから、親の死に目に会えるかどうかを争う事態なら別として、日常的にそんなに困る差とも思えないのです。


 JR東日本は事業戦略のなかで「地方路線に活力を吹き込み、地域と地域交通の活性化に貢献する」と掲げていますが、現状を見る限りは

鉄道として維持することが極めて困難な路線、区間については、ご利用実態を十分検証したうえで、当社グループを事業主体とする鉄道以外の輸送モードの導入も含め、全体としてのサービス水準の維持・向上を目指します

と、必ずしも鉄道にはこだわりません、と宣言された部分に組み込まれちゃったようにしか見えません。

 「鉄道以外の輸送モード」はJR東日本とは資本関係がない岩手県北バスがすでに市場を支配しているとはいえ、ここへJRバス東北が新規参入すること自体は、規制緩和でバス路線の開設が免許制から許可制になった以上は可能と思うんですけど、そんな動きも……聞いたことがないですよね。


 もし、

地域の鉄道・バス事業者と連携した魅力的な広域観光の提供等に取り組みます。

と記しているとおり、「地域のバス事業者」岩手県北バスの機嫌を損ねたくない、というところまで考えて「鉄道の山田線を廃止してJR東日本グループでバス路線に参入する」という選択肢を除いているなら話は別ですけれども、それならなおのこと鉄道で本気を出さなきゃですよねぇ。


 たぶん、東京にあるJR東日本の本社で新宿駅を見下ろしながら机上の経営企画を作って世の中動かしてる気分になっている人たち(がいるのかどうか知りませんけど)は、こんな隠れた需要が眠っている路線があるなんて知らないんじゃないかなぁ。(推測)

 自分が今の勤務先に内定したとき、本社採用事務局の方から配属希望地を聞かれて「(青森県東津軽郡外ヶ浜町の)三厩」(←ちゃんと直轄の事業所がある)と答えたら「それはどこですか?」と言われたのに非常によく似ています。

 旧国鉄が、東京本社で北は稚内から南は枕崎まで面倒を見切れなかったのと同じ、としか言いようがないです。


 JR東日本も2〜3社くらいにもう一度分割したら? と思います。


 かく言う自分も106急行には乗ったことがないので、一度はそっちも乗りに来なくちゃエラそうな口をたたける立場じゃないんですよね。

 もし、実はバス1台でなお余る程度の流動しかない市場だったら、そんな小さなパイを鉄道とバスで奪い合ったところで列車がガラガラなのに変わりはないでしょうから。
author by よんなん
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