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「おじいさんは山へたき木を取りに」は許容できるか

 日曜日に書いた話ですが、きょう書店へ行った(時刻表の発売日だった)ついでに絵本コーナーを見てみました。

 最初に見た棚(ハードカバーの絵本が並んでいる)で「ももたろう」を見比べると、各社で若干の違いこそあれ、どれもおじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行き、おばあさんが川で洗濯をしていると大きな桃が「どんぶらこ」とか「どんぶらこっこ」とか「ごっくりごっくり」と流れてくるお話でした。

 ……くもん出版の「ごっくりごっくり」は初めて目にする擬音語ですが、巻末には長野県に伝わる昔話を元に構成した旨の記載があり、なるほど長野県出身の親戚がいない私には聞き慣れないわけです。

 ちなみに値段を見るとこのコーナーは1000円を下回るものがなく、こんなに薄くて比較的大量に流通しているはずなのに、値段は専門書か同人誌並みだなぁ……って、そりゃフルカラー本ですしサイズも変形版ですからね。


 さて、少し離れたところに「○○○社の368円絵本シリーズ」という専用ラックがあって、日本の昔話や世界童話が気軽にそろえられそうなラインナップが目に入ります。

 そこにも「ももたろう」があって、手にとってみると

「おじいさんは山でたきぎを取ってきて、それを町で売って暮らしていました」

 ん! ま……間違ってはいないけど、、、、「柴刈り」より分かりやすいけど、、、、いいのか??

 ……確かに、私も幼少時に「しばかり」=「木の枝を取ってくること」と大人から教わりつつ読み仮名が同じ「(庭の)芝刈り」と混同してしまい、「なぜ芝刈りに山へ行くのか」と理解できなかったのは事実ですが。。。

(ちなみに、桃が流れてくる音は「どんぶらこ」だった)


 ついでに「おむすびころりん」も見ると、ストーリーは大きく間違ってないうえに読みやすい展開になっているものの、表題にもなっている「おむすびころりんすっとんとん」というフレーズが出てきません。

 んー、気軽にそろえて子供に与えやすい価格設定とはいえ、このシリーズを買ってきちゃうのはどうなんだ? と率直に思いました。

 日曜日に話に出たのは、この種の絵本シリーズのことですね。


 ただし、より現代の言葉に書き直されて理解しやすくなっているのは、中学〜高校で「古文」「漢文」に散々苦労した理系人間の私にはありがたいな、と思えてしまうのも事実だったりします。


 中学〜高校と古文を6年間やって、記憶にあるものは

 「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」

という、中学1年の一番最初にやったフレーズだけで、あとは何も頭に残っちゃいませんし…。


 漢文だって、現代語訳はあれだけ示唆に富む内容なのに、「返り点」やら「送り仮名」やら「助字」やらそういう「白文→書き下し文」のレベルで挫折していましたから。
(で、試験でも一定のウエートを占める → 点が取れない → 物理で高得点を取る → 理系人間の一丁上がり)


 もちろん、もしも高校生が「今は昔〜」も知らずに「竹取物語」を現代語訳されたあらすじでしか知らなかったら、大人たちは顔をしかめるに決まってますが。

 ただし、それを言っちゃったら、海外小説や、それこそ世界童話はすべて「日本語(しかも現代語)訳」なわけで、おそらく現地語を母語にする人が日本の書店で手に取ったら卒倒するような表現はさらに多いことでしょう。きっと。


 仮に、高校生が現代語でしか古文に接したことがなくても、それが瀬戸内寂聴の『源氏物語』だったらどうでしょうか。 ……たぶん、許容する大人はグンと増えると思うんですね。


 たぶん、現代語に書き換える作家の力量による部分が大きいはずで、より分かりやすい表現に直す出版社の姿勢は否定しないものの、「大量にシリーズ化して368円」という前提で出版社が作家を探すと一定の水準を保つことは難しいだろう、と結論づけておくことにします。

(当該のシリーズを手がける作家も、調べると絵本作家としてのキャリアはかなりあるようですが……昨年、犯罪を起こしてお縄になっていることも判明)
author by よんなん
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