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「お金もうけも充分したしね」

 アスキー創業者の西和彦さんの言葉です。


 学生時代に、西さんが講師を勤める科目を履修しました。

 何回目の講義だったかで、何でもいいから1人1つずつ質問してきなさい、という時間があったので、


「少し前に『西和彦失脚』とかいう話を新聞で読みましたけど、どういうことなんでしょうか」


なんて聞いたのです。

 当時はまだアスキーの会長だか特別顧問だかの肩書きがあり、私にはよく分かっていませんでしたから。
 他の人が、メディアの今後について質問するなか、我ながらワイドショー的な次元の低い質問だったかなぁとは思いつつ。
(なにしろ、理工学部設置の「マルチメディア政策論」という科目なのに)

 失脚が事実であること、そのちょっとした経緯などを話されたのち、別にいいんです、お金も充分もうけましたし、これからはね……と続けるのを聞いて、へぇー、と感心してしまったものです。


 若くして会社を興すような性格の人って、カリスマとして君臨しつづけたがるものだと当時の私はずっと思っていました。
 事業を通じて何らかの夢を実現するはずが、その半ばで破れ、「あの人は今」的な存在になるのは屈辱以外の何物でもないのではないか、と。

……良くも悪くも、創業者は第一線を退いても、何らかの形で指導的な立場を追われても、派手なことさえしなければ一生困らないだけのお金が手元に残るんですよね。

 よく考えてみれば会社をつぶしたのでないなら当たり前、といえばそうなんですけど。

 現在の西さんは学者をやっていらっしゃるようですし、そういえばダイエーの創業者も晩年は大学を作ったりしてましたね。


 芸人の世界でも、テレビに1年くらいじゃんじゃん出たと思ったらその後全く見なくなってしまうような人も、そういう部類に入るのかなぁ、と思います。

……レイザーラモンHGとか、ギター侍とかいう人たちのギャラがどのくらいだったのか私は知りませんが。
author by よんなん
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